さて、僕はその日から一週間ほど、ピンクに会えなくなった。理由は簡潔、彼女が花壇に来なかったのだ。
![]() 花飾りの帽子をまとった校長先生が、花の手入れをしているのを見かけるが、ピンクの姿はどこにも見当たらない。僕が相当、がっくりきたのは言うまでもない。
![]() 幻だったのだ。彼女は、幻だった。僕は必死に自分に言い聞かせていた。
![]() 五月も終わりに近づき、梅雨の季節に入り始めたころ、僕はまた不思議な夢を見た。
中学に入り始めたばかり頃の僕が、夜桜が吹きすさぶ中、花びらを一枚だけを手に入れようと、必死にその場を駆け回っている。たくさんの花びらが降り注いでいるのに、一枚も手に入らない。
![]() 「難しいな」ふと、僕は天を仰ぎ、こんもりとした桜に隠れている木の枝を見つめた。しばし、僕は目を疑う。小さな女の子らしい人影が、細い枝に座っているのが見えたのだ。
![]() 「あれ? おーい! 危ないよ。降りておいでよ」しかし、あんな細い枝に小柄とはいえ、人間が乗るだろうか。
僕は、樹のふもとの、枝がよく見える場所まで移動した。そのとき、風がぶわっと強く吹いた。
僕は、パーカーの襟を抑え込む。そのとき、桜の影に隠れていた女の子が、風と共に僕のほうへ落下してきたのだ。
「うわああああ」僕は、突然のことに声を上げた。両手を広げて、彼女を受け止めようとする。そのとき女の子は、ふわりと宙に浮き、静止した。
ピンク色のベレーボーをかぶったおかっぱ頭で、ピンクのコートを着ている。歳は、僕より二つくらい下だろうか。
桜のピンクがかった白に、照りかえった光で彼女の顔を確認した。
![]() まあるい瞳に、花びらのような頬の形をした可愛らしい女の子だった。どこかで会ったことあるような…。
「お兄ちゃん…」彼女は僕を見て、そうつぶやいた。
「ピンク!」突然、見覚えのある少女の面影と重なり、僕は叫んだ。そこで、僕は目が覚めた。
![]() 「はあああああ…」放課後、僕はモップを持ったまま、廊下の窓際で深いため息をつく。窓の格子に片手を乗せて、がっくりとうなだれていた。
「どうしたんすか。ピン太先輩」後ろから、体格の良い男子生徒が忍び寄るのがわかった。
僕は、口を一文字にさせたまま、振り返った。 「あ…ゴン太」僕はつぶやく。ゴン太は、僕より二つ学年が下の後輩だ。
![]() 小学生の頃からの幼馴染でもある。成長の速度が周りより著しいのか、僕よりも一回り背が高く、ゴツゴツした体型である。刈り上げた短髪と浅黒い肌と大きな体は、学校内でも目立つ存在だ。
彼は野球部だったか、陸上部だったか、掛け持ちしているかは忘れたが、体育系の部活動からは引っ張りだこである。
愛しいブログ読者さまに雪崩のごとく桜の奇跡
![]() ![]() ![]() 小説
![]() ですね〜(*^_^*)
さてさて今日は、『僕のいた時間』DAY☆
楽しみにしています!
ありがとうございます
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